愛、シテあげる。番外編
「よくいみが分からないんですけど……?」


「あのね、蓮くんはお母さんって呼べないでしょ?だからそのぶん、わたしが呼ぶ」


「え?」


「わたしはお父さんって呼べないから、蓮くんはわたしのかわりに、お父さんのことお父さんって呼ん……だら、どう、かなーって…………おもったの」


威勢のいい声は、自信無さげに小さくなっていく。顔も、どんどん俯いてしまって……。




彼女の言葉に、最初はポカンとしていたが、意味を理解するのに時間はかからなかった。


この子は、僕のことを気遣ったのか?

僕が『お父さん』って呼べないこと、悩んでるって分かって、それで……?


「ごめん、蓮くん、おこった?」


「いいえ」


「え、ほんと?」


「はい、むしろ……」


「むしろ?」



嬉しいです、なんて言えなくて。


「なんでもないです」


「あ、そう?」


「でも、やってみます」


「ほんと!?やった!わたしもがんばる!」



にっこり笑う彼女に、胸がドキドキする。それに、なんだかあったかくて…。


「真央さんはかわってますね」

「え、よくいわれるけど……うれしくない」


「かわってます」


「もー!」



真央さんのコロコロ変わる表情に、胸が熱くなる。

これはなんだろう。

初めて感じるものを誤魔化すように、真央さんに微笑んだ。




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