愛、シテあげる。番外編
その日から、僕と真央さんは一緒に遊ぶようになった。

遊ぶというよりも、一緒に過ごすと言った方がしっくりくるかもしれない。





僕が木の上で本を読んでいると、真央さんは近くの枝に座って絵本を読んだり。
僕が黙って空を眺めていると、真央さんも黙って鳥と戯れたり。


彼女は僕の世界に踏み込まなかった。いつも静かに、気がつけば側にいた。

それはまるで、空気のように。

だから、他の人では感じる嫌悪も、真央さんなら何も感じなかった。

初めは、あんなに苦手意識を持っていたというのに。


彼女の側は、ひどく居心地が良かった。







「蓮くん」


ある日、真央さんは葉っぱをいじりながら僕に話しかけた。


「なんですか」


「呼べるようになった?」


「………いえ」


「そっか」


わたしもだよ、と目を合わさないまま呟く。


「はやく、呼べるようになりたいんですけどね」


「うん……」


簡単なこと。それはとても簡単なことなんだけど、僕たちにはとても難しいこと。


そよぐ葉っぱを眺めていると、真央さんが口を開いた。



< 78 / 103 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop