愛、シテあげる。番外編
「目、合わせてください」





チュ、とこめかみ辺りに蓮の唇が触れて、心拍数が急上昇する。




やばい、って………///





自分の脈拍が聞こえてきて、余計恥ずかしくなる。

だって、絶対、蓮にも聞こえてるから。











「ねぇ、真央?」



「っわぁ!」




み、耳を!


噛まれた!






「そ、そんなとこ噛むなっ!///」


「え、なんですか?」


「うわ、や、くすぐったぃ……!」


「僕の目、ちゃんと見ないからですよ」




唇よりも柔らかいものが触れて、カッと顔が熱くなった。



「みっ、見る、見るから!」




必死に訴えれば、魔王にも通じたのか、少し顔を離してくれた。



でも、近いことに変わりはない。




伏せていた瞼を、ゆっくり、ゆっくり上げていく。



蓮が着ている制服の白いシャツから、甘い爽やかな匂いが漂ってきて、思わずクラリとしてしまう。





蓮の薄い唇が視界に入り、淡い色をしたそれに息を呑む。



そこからまた目線を上げていくと、滑らかに伸びた鼻筋が見え、ついに黒曜石のような瞳と出会った。



目が合った瞬間、鼻から喉にかけて、痛いくらいにドキドキが走る。ジワリと視界が滲んだ。



「真央、」






近い。




ドキン、と跳ねる鼓動。



心臓ってこんなに存在感あったっけ?













「キス、してください」











これが罰ゲームです、と囁いてニッコリ笑う。








――ねぇ、真央もしたいでしょう?









蓮の瞳がギラリと光って


まるで甘い魔法のように、私に呪文を唱える。






「真央………」







テノールの声が、私の唇のすぐ上で響く。




触れるか触れないかの距離に、もどかしく感じたのは、どうしてだろう?









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