愛、シテあげる。番外編
鞄を手にして走り出そうとしたとき、真央さんが僕の手を掴んだ。


真央さんが男の子に触るなんて今まで無かったから、僕はさすがに驚いて振り向く。



「真央さん…?」


すると、何も言わずに彼女は顔を近づけてきた。

状況を把握する間もなく、触れる唇。


柔らかな感触は、一瞬で離れていった。



「……どう、して?」


「……えへへ。してみたかったんだ、蓮くんと。…………ほら、いきなよ。まさひこさんまってるよ!」



スッと離された小さな手。

訳も分からないまま背中を押され、僕は足を数歩進める。


「真央さん、どうしたんですか?」


浮かれていた僕にも、彼女がいつもと違うことくらい気付いた。

でも真央さんは、ただ笑ってこう言うんだ。


「蓮くん、バイバイ」





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