愛、シテあげる。番外編
ふわりと蓮の匂いがこの空間を支配して、頭がおかしくなりそう。


近いから?蓮が私を見つめているから?わかんないけど、ドキドキしすぎて涙出てきた……。




「うぅ………」


「泣かないでください」


「な、泣いてない……」



キッと睨めば、蓮は眉を微かに下げてポツリと呟く。





「そんなに、僕が嫌ですか?」




え?


私が目をぱちくりさせると、蓮は覗き込んでくる。


「どうなんですか」


「どう、って?」


「僕のこと、嫌いですか」




は?



「嫌い?」


「じゃあ、好きですか」


「好き?」


「どうなんですか」



そんなこと聞かれても…!

思いがけない質問に、あたふたと目を泳がせる。


私は蓮をどう思ってる?好き………じゃないじゃない!でも嫌いってわけでもない。ていうか好きとか嫌いとかそういう選択しかないの?


「友達だと思うじゃ駄目?」


「………友達、ですか」


見るからに悲しそうな顔をする蓮に、余計慌てる。

だ、だって、蓮ってば眉間に皺を寄せて目を伏せて、唇もキュッてして……私の耳の下辺りに顔を擦り寄せてきたんだよ!


か、かかか、可愛いいい!!///


何らかの衝動に駆られて、蓮の背中に手を回してギュウッと抱き締めた。

後で、やっちまったなーと後悔することは必然だと、少し考えれば分かることだったのに。


私はそれより、蓮の表情と行動と匂いで頭がいっぱいだったんだ。


「………真央さん?」


少し驚いたような声音。

背中から伝わる温度と、密着した体に何故か懐かしさと安堵した思いが込み上げる。


触れる蓮の体は、骨張っていて少し固い。それに、私より体温が高い気がする。
男の子なんだな、と改めて実感したのに、不思議と怖くなかった。


右胸に当たる蓮の左胸から伝わってくる、トクトクと速い鼓動を感じるからかもしれない。


私だけじゃない。蓮も、ドキドキしてるんだ……。



そう思うと、異様に蓮を愛しく感じた。



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