愛、シテあげる。番外編
私は、温かい人間ではない。
ただ、仕事柄こういうことに慣れているだけ。



胸に痛みが走ったのは、


そんな言い分を心の中で唱える自分に、

人からの賛辞を素直に受け止められない自分に、


心底、悲しくなったから。





「…………何か、お辛いことでも?」


「…………」


「良ければ、話してください。見ず知らずの私が、あなたに干渉できる権利はありませんから」


「…………ありがとうございます。しかし、お仕事に差し支えるのでは?」


「ご心配はいりません」


これは嘘だった。

まだ山のような書類の束が隣の部屋にはあるのだから。

だけど、



「…………本当に、ありがとうございます」



この笑顔が見たいと思ってしまった。


この人の前では、いい人でありたい

役に立つ人間でありたい


そう思ってしまったんだ。



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