愛、シテあげる。番外編
「本当にごめんなさい。私ったら、もう……ほんとに、ダメね……」



ぐ、と眉を寄せ、自嘲気味に微笑む彼女に、私の胸はまた傷んだ。



そんな顔をしないで欲しい。



ふと浮かんだ思いと、伸びそうになった自分の右手。


プルルルル……!!


隣の部屋で鳴り響いた電話のおかげで、ハッと我に返った。


いけない。私は今、何を……。


「……ごめんなさい。こんなこと言うつもりは無かったんですけど、何だかホッとしてしまって、つい……」


私の表情が強張ったのに気付いたのか、咄嗟に謝罪する彼女に首を振った。


「いえ、違いますから。貴方のせいではありません」


「でも……」


コンコン、


「っ、はいはい、何かな?」


ガチャ、と姿を見せた秘書。無表情だが鋭い眼光で私達を見つめる。
私は咄嗟に立ち上がり、彼女が見えないように秘書の前に立ちはだかった。

男でも女でも、泣き顔はあまり人に見られたくないだろうからね。


「社長、蓮様からお電話です。お繋ぎしますか?」


「蓮が?……すみません、暫く席を外しても?」


「ええ、私のことはお気になさらないでください」


「ありがとう。……今そっちに行くから、待ってくれ」


「畏まりました」



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