愛、シテあげる。番外編
礼をしてから応接室を出て、社長室の電話を取る。

呼び掛けると、長い間待たせたにも関わらず、相手はすぐに応えた。


「ごめんね、蓮。お客様の話を聞いていてね……」


「父さんが謝ることではありません。忙しいのに、電話をかけた僕が悪いんですから」


「いや、蓮からの電話なら、いつだって大歓迎だ。遠慮なんていらないよ。それで、何かあったのかな?」


養子に来た親友の子。賢くて優しい、大事な大事な息子。

淡々とした中にも温かみが感じられる蓮の声は、聞く人の心を落ち着かせる効果があるようで

私のささくれた心が、やんわり和らいでいくのを感じた。


「ええ、少し気になることがありまして……父さん、今度の取引先との打ち合わせの予定は」


「確か、明日19時だったかな」


ね、と秘書に目で確認をとると、彼女はコクリと頷く。


「ということは、父さんは今日中に書類に目を通すんですよね?」


「ああ、そのつもりだよ。色々と準備しておかないとね」


作戦も考えないと……。

頭が痛い話だけどね。


「なら僕は、この茶封筒をそちらに届けたほうが良さそうですね」


「ん?」


茶封筒って…………。




「あ!」



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