月luna~眠れる王子と最後のキスを・・・~
車にのった私たちは何も言わず1時間をすごした。
だけどその沈黙は嫌じゃなかった。
男の車から香るタバコの香りと時々こっちに向ける視線がなんとなく居心地よく感じられた。
何も言わないけど気にしてくれてる、そんな視線が・・・。
「あの・・・」
私はつい、男に話しかけてしまった。
『晃でいい』
「?」
『名前』
「あ、はい・・・晃さん?」
フッ
『なに?』
男・・晃さんは少し笑ってこっちを向いてくれた。
でもつい話しかけただけで何も話す事の無い私は、また黙ってしまった。
・・・。
そのまま私たちは学校に着き、晃さんは私を見送って帰っていった。
私は話すきっかけが出来たのに、何も話せなかった事を後悔した・・・。