月luna~眠れる王子と最後のキスを・・・~


 ごめん、お母さん・・・。

 我慢できなくて。


 「弱くてごめん」

 振り返ってお母さんに謝った。

 でもお母さんはもちろんいない、誰もいない・・・。


 はずなのに、ドアの横には誰かがいる。

 よく見ると20代ぐらいの男がそこで寝ていた。


 その男は満月に照らされていて、一瞬妖精だと思うくらいキレイ・・・。

 なのに男の頬には薄い涙の痕が残っていた。


 何があったんだろう・・・。

 そんな事を思っていると、私は無意識にその男の頬に触れていた。

 ・・・。

『んん゛』

 男は起きそうなのに手を離す気にはなれなかった。

『誰?』

 あまりにも男が落ち着いていて私はパニックを起こした。

 なのに男は続けて質問してきた。

『何してるの?』


 私も分からなかった。

 自分が何をしてるのかをわかってなかった。

 ・・・。




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