月luna~眠れる王子と最後のキスを・・・~

 屋上の空は曇ってた。

 そのせいで空気は余計にじめっとしていて暑かった。

 
『もう会えない』

 暑い中、階段を上った晃さんは少し息が乱れてた。

 それでも聞き間違える事が出来なかった。


 晃さんは、はっきりその短い言葉だけいって、黙った・・・。


 分かってたのに、それでもその言葉を聞いて崩れ落ちそうになった。


 だけど、今はダメ。

     まだダメ。


 と、心の中で唱え続けた。


「わかりました」

「・・・もう少しここに居たいので、もう帰っていいですよ」

 私は必死に涙をこらえ、出来るだけ明るく言った。

『・・・』

 晃さんは静かにドアへ向かって、ドアを閉めた。

 ガチャッ


「うぅ゛・・ぅ゛・・・・あぁ゛・・・あ゛ぁ゛ぁぁ」

 どうせ無理なら「好き」だなんていって欲しくなかった・・・。



 さっきまであんなにも大切だった晃さんからの「好き」って言葉が今は残酷な物に思えてくる・・・。


< 30 / 110 >

この作品をシェア

pagetop