先生と生徒


しばらく抱き合った後に、


「華…?話すけど、引かないでね?」

そう言って、抱き合っていた体を離し、教室を出た。


「マキの話なら、引かないよ?」


「ありがとう」


「ここで、いっか…」


先ほど、華と言い合った空き教室へと入った。



「…私ね、酒井マキじゃなかったんだ。

もともとは中西マキって言って、この間あった弟は中西信也」


「…?どういうこと?」


「酒井に養子に入ったの。てか、借金の形に酒井に入ったの。当時中西には大きな借金があって、私が酒井に入る代わりに、借金以上のお金をくれたってわけかな」


「…難しいね」


「確かにねっ。

最近になって本当のお父さんが倒れたって聞いて、お見舞いに行ったら信也に会って…色々あって、頭こんがらがって…」


「…それは和也くんと何か関係ある?」


「…何もない。和也のことは私の気持ちの問題だから…」


「そ…」


「で、最近になって…と言うか昨日?

一緒に暮らさないかって…言われて…」


「中西の人に?」


「そう…」


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