先生と生徒
「雄喜、まだ買えてないの?」

店内から女の人が出てきた。


「あ、あとちょっと待ってて。

それとこいつら、俺の生徒」


「あ、そうだったんですか?
妻の佐知子(サチコ)です。」

奥さんはすごく綺麗で、優しそうな顔付きだった。


「あ、酒井です。」

"和也も"という意味で腕をチョンチョンとつついた。

「稲原です(イナハラ)。」

「で、この可愛いのが俺の息子♪」


「可愛い…」


先生が抱き抱えた息子はすごく可愛いくて思わず感嘆の声が出てしまった。


「だな」

和也も自然と笑顔になる。

それ以上に先生の笑顔が胸に残る。


「じゃあお前ら、楽しんでこい!」

そう言うと先生はお店をあとにした。

…買わなくていいのかな。

そんな小さな疑問を抱きながら順番が来るのを待つ。


「可愛いかったな、先生の息子」
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