先生と生徒



「…へ?」


「さっきから考えてたんですけど、何も分からなくて…」


「何も泣かなくても…」

少し涙ぐんだ瞳に映る先生の笑顔は悪魔の微笑みではなく天使の微笑みだった。


自分が情けなくて。
毎日毎日遊んでばっかで、勉強なんてしてなくて。

中学の復習ですら危うくて。

やっと"危機"というものを感じて、皆が遠く感じた。

和也も一瞬、遠く感じた。
自分に夢があって、自分を持っていて。
そんな和也が羨ましかった。


「ほーら。早くやるぞ?

って、ここにあったんだ!このプリント」


「っへ?」


「悪い、悪い!!

このプリント出来なくて当たり前、3年生のヤツだから」


「…3年生?」


さっきまで必死で悩んで、必死で考えていたプリント。


「まぎれてたみたいだなー…ごめん、酒井」


「良かったー…」


安著の微笑み。
良かった…
さっきまでの危機はそんなにも感じなくなった。けど、私の頭が悪いことには変わりない。

…ちゃんと勉強しようかな


心入れ替えて席に着く。
ふと目に入った先生の顔。

…何か、赤い?


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