先生と生徒
小さな小さな声で自分の言葉で、伝えた。
自分の意思。
自分勝手な思い。
「ん?何か言ったか?」
丁度、隣を通った大きなトラックの爆音と、バイクの音で何も聞こえなかったようだった。
「何でもないです」
「…ちゃんと自分の意思で伝えるんだ、分かったな?」
「へ…?」
聞こえてなかったはずなのに。
「ほら、着いた。」
いつの間にか家の前。
「ありがとうございました」
「気にすんな?…子どもが何気使ってんだ?」
先生はそれだけ言うと車を走らせていった。
自分の意思で、か…
この家の中で自分の意思を言える相手なんて…
、いた。
もう一人、いる。
私が唯一、私でいられる相手。
私が唯一、自分の意思を伝えられる相手。
私が唯一、甘えられる相手。
家の前に立ち、携帯を取り出す。