先生と生徒
「で、話って何?」
重なりあった唇の熱も冷め始めたころ本題に入った。
「…聞いてくれる?」
「マキの話なら何でも聞くって言ったじゃん?」
優しい笑顔の和也に話す決心が出てきた。
「今から話すね?
私の話なんだけど、…」
酒井 マキ
本当は中西 マキ(ナカニシ マキ)。
酒井家に引き取られることもう10年。
中西だったころに、父の莫大な借金の形にされて、今の酒井家に来た。
酒井家にはもう一人子どももいて、その中に私が入ることは中々難しくて、いつも一人。
前に居た家に、どうしても帰りたかった。
お母さんの作るカレーが大好きで。
お父さんの話が大好きで。
大好きな大好きな家族だった。
本当の理由を知るまでは、大好きで大好きな家族だった。