先生と生徒
酒井家は本当に私によくしてくれて、傍から見れば、普通の家族だった。
私も懸命に努めた。
いつも笑顔を作って、真面目に勉強もして。
友達もいっぱい作って、普通の日々を送っていた。
けれど、あの日聞いた言葉は今でも忘れはしないだろう…
酒井家に来てから3年後。
夜中、めずらしく目が覚めて、リビングに行った時。
お義母さん、お義父さんの話を、聞いてしまった。
「――…中西さんところ、もう出来たんだって?」
(…中西?…お母さん、お父さん!!?)
「…そうらしいぞ?
借金も全て払い終わったそうだ」
「そうなのね…
じゃあ、マキちゃんも、中西さんのところ帰るのかしら?」
(戻れるの…?!)
私の淡い願いは次の言葉で打ち消されることとなった。
ドアに身を隠し、耳を澄ませて聞いていた。
嘘だと思いたかったお義父さんの言葉を。
「もう"要らない"そうだ――…」