先生と生徒


「…全部が嫌になって…勉強も嫌だし…家に居ても心ここにあらずみたいで。酒井家の愛情は伝わるけど…本当に愛情が欲しかったのは…」


「マキ、分かったから…」

「本当のお母さんとお父さんからだった…」


本当に愛情があれば借金の形になんかしないよね…


「…辛かったな?マキ…

俺、話してくれて嬉しかった。マキの気持ち聞けて良かった。」

"だから…"そう言葉を続けて私を抱きしめてくれた。


「…もう泣くな」

和也の腕から伝わる温かいむくもりに、求めていた愛情に、今まで以上に涙が溢れた。


「…ありがとう、和也―…」

「…気にすんな?

俺は話聞いたからってマキを軽蔑なんてしないし、俺から離れるなんてもってのほかだし。マキは考え過ぎなんだよ」

意地悪そうな笑顔を浮かべて、涙でいっぱいの目尻を優しく指でなぞる。


「……和也は私が求めてくれる言葉を、いつもくれるね?

ありがと…」


「気にすんなって言ってんだろ?

マキは、頑張ったよ?」

「和也…」


「でも、酒井家の人から逃げちゃダメだ。

精一杯愛してくれてるんだろ?…それならマキも答えなくちゃ?」


「答える?」


「そう。中西から来たマキを我が子同然にここまで育ててくれたんだろ?それなら、その気持ちに甘えたっていいんじゃないか?」


「…今さら…甘えられないよ…」



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