先生と生徒
電車の時間と時計をにらめっこ。
あと、1分か…
「先生はどうしてここに?」
車、のはずなのに…?
「さぁてな?何ででしょう♪」
「…?あ、来た…」
"ご乗車の方は白線までお下がりください"のアナウンスと電車の音で先生の言葉は聞き取れなかった。
「…が……から」
「え?先生、よく聞こえないです」
電車のドアがプシューと開き、先生に言う。
「何でもない。早く乗れっ♪」
トンと背中を押され、電車内に入った。
ドアがプシューと閉まり、ドアの前の先生が何か言っている。
『オ・ツ・カ・レ』
口元が確かにそう言ったことを確認して、微笑みを返した。
この時から私は巻き込まれていた。
ほどけることのない、スパイラルに。
繋がることのない、恋の網に。
恋の罠に―…