ストロベリーチーズケーキアイス・kiss~甘酸っぱい恋の味~
茫然と立っているだけのあたしに、お姉ちゃんは笑顔のまま言った。


「ゆうちゃん、また無理して熱出しちゃうかもしれないし」


「……」


「心配だし、ずっと側にいたいから」


「……」



「お母さん達には、ちゃんと話してあるから」


「…うん」


「お母さん達のこと、頼むわね、恵里佳」


崩れない笑顔のままのお姉ちゃん。


あたしも笑顔のまま、分かったと言った。


先生と一緒に手際よく荷物をまとめて家を出て行くお姉ちゃん。


先生は、その荷物をトランクに積むとバンと閉めて、じゃあ、また学校でなとあたしに言うと車に乗り込んだ。


そして、何も言わないままあたしの横を通り過ぎ、助手席のドアを開けようとするお姉ちゃんを呼び止めた。


「お姉ちゃん!」


無言で振り返るお姉ちゃん。その顔には笑顔がなく、感情のない無表情の顔に戻っていた。



そんな顔にしたのはあたし。


「お姉ちゃん…ごめんなさい…!」


「……」


「ごめんなさい…」



もう一度謝って、頭を下げた。そして顔をあげると精一杯の笑顔で言った。


「いってらっしゃい」


一瞬、お姉ちゃんの瞳が揺れたのが見えた。


哀しい表情を浮かべたお姉ちゃんは「いってきます」と小さく呟いて先生の車に乗り込んだ。


車が走り出すと同時に溢れ出した涙。


先生の車が見えなくなっても、あたしの涙は止まらなかった。



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