PALL MALL
2人の間に沈黙が流れる。
とは言っても、別に知り合いでも何でもないからそれは構わない。
タバコが吸いたくなってきた。
俺は胸ポケットから箱を取り出し、そこからタバコを1本つまみ出す。
「………。」
いつもなら迷わず火を点けるが、今日は女が横にいる。
「タバコ…吸っていいかな。」
俺はそう言いながら女の方を向いた。
その時初めてその女を見たが、予想していたより遥かに若かった。
『女』というよりはまだ『女の子』に入る年代だろう。
「…どうぞ。」
女…いや、女の子は熱心に携帯の文字を打ちながら、俺と目も合わせずにそう言った。
「…どうも。」
形だけのお礼を言って、俺はタバコに火を点けた。