王様の、言うとおり
「……菜月に、見られた。」
「菜月ちゃんに?」
「うん。」
予想外だった。
帰ってくる、と連絡があった時に、もしかしたらこうなるかもしれないと分かっていた。
母さんが物に当たって暴れる事なんて良くあること。
ただ、出張が多いから家に帰ってくることは少ない。
俺にとっては好都合だった。
たまに帰ってくる時に母さんが爆発しないようにすればいい。
暴れてしまっても、少しの間我慢すればいい。
ケガも毎日する訳じゃないし、久しぶりに運動してケガした、と思えば別に平気だ。
時間が経てば治る。
散乱した物だって、片付ければ。
母さんがまた出張へ出かければまた、一人のびのびと過ごせるから。
ちょっと我慢するだけでいい。
そうやってずっと過ごしてきたから苦じゃなかった。