王様の、言うとおり
俺の言ったことは必ず守ってきた菜月。
だから、来るなと菜月に告げた時、大丈夫だと安堵していた。
それなのに何で菜月が……。
呼ばれた声は、少し震えていて。
菜月が目撃してしまった事なんてすぐに分かった。
見られた、何て思ってる時には、すぐ傍に菜月が来ていて。
見られた事に動揺していた俺は菜月を冷たく突き放すような言い方をしてしまった。
ただでさえ母さんの“そういう一面”を見てしまって怯えているのに、また怖がらせて。
菜月は優しい母さんしか知らなかったから。
見せたくなかった物を見られてしまって菜月の顔を見られない俺に、
菜月は俺の手首に出来た傷を心配しながら家に帰っていった。
手首に出来た傷。
顔に飛んできた皿を庇う為に差し出して出来た。
見れば思っていた以上に血が出て。
菜月は血がダメだからまた怖がらせた。
溜息を出しながら、部屋を片付けて、そのまま疲れて気付けばリビングで眠ってしまい朝だった。