王様の、言うとおり


聞いてなかった……。



取り敢えずやんわり笑って先生を見れば、黒板を軽く叩かれた。




『だから、ナトリウム原子は1個の価電子を放出してどんなイオンになりやすいんだ?』


黒板に書かれた字をご丁寧に読み上げてくれた。





か、価電子……?



黒板から必死にヒントを得ようとするけど、先生に見つめられてる為出来ない。

話を聞いてなかった、と思われるのが嫌だから何とか早く答えたい……。




かといって聞かれた答えは全然分からない。


時間が経てば経つほど、どうしたのか、と周りの生徒が私の方を振り返ってくる。




見ないでよ。前向いてて。



見るなら助けて。



視線を感じて顔が熱くなってくる。

まだそこまでノート取ってない!

ただ、書き写していただけで分からない。


……どうして。


いつも横から出しゃばる生徒が今来ないんだ。




余計な時は喋る癖に。

今なら解答権、喜んで譲るのに。



うぅ……



『……ネオンと同じ電子配置の、ナトリウムイオン。』



ボソ、と聞こえるか聞こえないかの音量で耳に届いた、声。




え、と声のした方を向こうとすれば、すぐさま



『向くな。ネオンと同じ電子配置の、ナトリウムイオン。』


もう一度、聞こえた。






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