王様の、言うとおり
『菜月。』
「な、にって!わっ!」
『――……転けるよ。』
「――っ、遅い……!」
これは大体一週間に一回程度あるような気がします。
特に雨の日のバスなんて降りる時に必ず滑ります。
上の二つを聞いて、すぐに分かると思いますが、キングは言うのが遅いです。
事後報告の忠告。
名前を呼んでくれた時点で言ってくれればいいのに、いつも痛い思いをした後に教えてくれるのです。
周りに迷惑がかかる狭い歩道橋や大勢が行き交う駅のホームは腕を引いてくれますが。
『焼けてきたよー。』
「あ、うん。」
『菜月汚す。貸して。』
……数ヶ月前、合格祝いの焼き肉になぜか親がキングを呼んでキングも同席した時の事。
カーディガンを着ていて、焼き肉を取ろうとした時にタレが付き添うになったらしく、
さりげなくタレにつかないように腕を持ち上げて私からトングを取り上げ代わりに野菜を入れてくれた時は
その仕草があまりにも自然で違和感が無くて不覚にもドキッとしてしまいました。
……返ってきた私のお皿の中身がおかわりし放題の野菜ばっかりだったのですぐにやっぱり優しくないと思いましたが。
そんなキングの先読み能力の中で一番すごいと思ったのは、私とキングが入学した時の事です。
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『今日から一年間、辛いことも楽しいことも力を合わせて頑張っていきましょう。』
入学した次の日の一限目のホームルーム。
そんな担任の会話から始まりました。
『で、早速なんだけど委員を決めます!』