王様の、言うとおり
……さっと入れてさっと引き抜こう。
そしてここを飛び出そう。
紙を取った後の一連の動作をシュミレーションして、もう一度キングを見る。
何を考えているか読み取れない表情で私と壺を見下ろすキング。
『い、入れます……。』
「やっぱり俺がしようか?」
『け、決心が鈍るような事言わないで!』
こんな時に珍しく優しい言葉を言わないで欲しい。
さっさと入れろよ、くらい言ってくれれば、その怒りに任せて手を入れるくらい出来るかもしれないのに。
震える、手。
一度グッと強く握って、まずちょっと確認と壺を覗いてみれば、中、ましてや底など見えない真っ黒の闇。
怖い、怖い。
でも入れないと。
ゆっくりと深呼吸をして、すっと息を吸い込み……一気に手を突っ込みました。
ひんやり、冷たい内側。
どこ、紙は。
静かに動かしながらもっと底に入れないといけない、と思っていると。
ひんやりと何かが、私の手、と絡みました。
ビクン、と体ごと反応し、思わず手を引こうとしたけれど、絡んだ手は私の手に絡んだまま、何かを持たされました。