王様の、言うとおり
「……菜月?」
少し、キングが動く気配がしたけど、首に回した腕にグッと力を入れて、背中に顔をくっつけたまま。
暑いはずなのに、キングの体はひんやりしてて。
『……ばか。』
気付けば私の聞こえてくる声も、なぜだか震えてる。
『なんで、言わないの?』
言って欲しいのに。
『なんで、隠そうとするの?』
ケガした時だって。
「菜月、帰って。」
優しくそう言うから、逆に不安になるんだよ。この家に一人にして、キングはどうするんだろうって。
「聞こえてる?帰って。」
『やだ。』
「……菜月。」
『だって、だってまた溜め込むでしょ?』
顔を上げれば珍しく困った顔をしているキングの目とかち合う。