王様の、言うとおり



聞き返してしまったけど、今の一言で分かった俺は、立ち上がってハンガーに掛けていたシャツを手に取る。


《クッション……ベランダにあるんですけど……》



申し訳無さそうな菜月の声。


もう少し、な。




『だから?』




我ながら意地が悪いと思う。

だけど、面白いから。仕方ない。



《返して貰えません……?》



この、菜月の俺にお願いする声。
聞いて、つい笑みが零れる。
声は絶対に向こうに聞かせないけど。

『菜月が勝手に投げて来たんでしょ。自分で取りに来れば?』



《そんな……!》




< 593 / 600 >

この作品をシェア

pagetop