王様の、言うとおり
聞き返してしまったけど、今の一言で分かった俺は、立ち上がってハンガーに掛けていたシャツを手に取る。
《クッション……ベランダにあるんですけど……》
申し訳無さそうな菜月の声。
もう少し、な。
『だから?』
我ながら意地が悪いと思う。
だけど、面白いから。仕方ない。
《返して貰えません……?》
この、菜月の俺にお願いする声。
聞いて、つい笑みが零れる。
声は絶対に向こうに聞かせないけど。
『菜月が勝手に投げて来たんでしょ。自分で取りに来れば?』
《そんな……!》