王様の、言うとおり




『帰っていいですか?』




まだ食べているキングに、一応聞いてみます。





帰りたい。



キングのご要望通りに朝食は作ったんだし、もう引き止められる用も無いんだし、そろそろ帰っても良いでしょ?




聞いてみたけど何と言われても帰るつもりだった私は立ち上がります。


「あー……待って。」




『え?』

サラダを口に入れて、キングはテーブルの端に畳まれてあったチラシをスッと私の前に滑らせてきました。



何……?






浮かせていた腰を下ろしてチラシを見れば、

昨日から明日まで近所の神社で開かれているお祭りのチラシ。





そう言えば家の近所にもあちこち貼られていたし、家にもあった。




もうお祭り季節かぁーって、思ってました。







「今日6時。迎えに行くから用意しといて。」

『えっ!な、なんで!』

さらっと言われた言葉にチラシからキングへと視線を移します。





迎えって、キングとお祭りに行く、って事?


『ちょっと待って下さい。何で、え、私とキ…煌がお祭りに?』



「焦りすぎだろ。そーだけど?」

『何で!』

「何でって……俺が行きたいから?」

『どうして聞くんですか。』

「だって他の奴が行きたいなら俺が菜月誘う?」

『そうですけど!嫌です。』



「何で。」


『……友達いっぱい来るのに見られたくない……。』





町で大きな祭りだもん。




同じ中学だった人とか、もしかしたら高校の人も。

キングは自覚が無いかもしれないけれど人気だし有名で。

もし誰かに一緒に居るところを見られて誤解でもされたら大変な事に。

嫉妬の対象で虐められたら?





付き合ってる、なんてデマ流されてしまったら?




隣の家だって事も本当に仲の良い友達以外誰にも言っていないのに。







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