王様の、言うとおり
お祭りに来たのに、キングの背中しか見れないような気がしました。
日は落ちて来たのにまだムシムシする気温。
蝉の鳴き声で更に暑さが増しているような気がしながら、首に張り付いていた髪の毛を手で払う。
サイドで結んでいるけれど、これはアップにしてきた方が正解だったのかもしれない。
でも普段そんな、可愛く上の方で、なんて結び方しない(出来ない)小心者の私はやっぱりこういう時も抵抗があり出来なくて。
これが精一杯なんです。
私のペースに合わせてくれる事なくまるで私が遅れた時間を取り戻すように歩くキング。
……そんなにはしまきを早く食べたいのでしょうか。
心配しなくてもはしまきは逃げないと思います、きっと。
だんだんと神社に近づくに連れて多くなってくる人。
通りを歩く私達の隣を通っていったバスは朝のラッシュの時のように人が沢山乗っていて窮屈そうでした。
神社の階段には座り込んで出店で買った食べ物を食べてる人。
キングはそんな人に目もくれず、ただ前を真っ直ぐ見据えて階段を上がっていきます。
かき氷美味しそうだなぁ。
美味しそうに食べている人を見ながら私も階段を上り境内へ。
階段の上にある鳥居をくぐると神社はひんやりとした、やっぱり少し違う雰囲気があって。
でもいつもじゃ有り得ない程の客でガヤガヤと賑わってました。
「……はしまき。」
急に立ち止まったキング。
見れば少し先にはしまきの出店。
「買ってきて。」
『え。』
それだけいうとすぐ近くの適当な段差に腰掛けたキング。
買ってきてって。
『こ、煌が食べたいんでしょ?』
「ん。」
『自分で買えば……。』