王様の、言うとおり



すると、口角が上がったキング。



ひんやりと背中に汗が伝いました。

『いいの?菜月待たせて俺一人で行っても良いけどここまで戻って来るの面倒臭いし。

だからって付いてきたら俺と一緒の所誰かに見られるかも。
ここは菜月一人で行くのが最善だろ』



……何ですか。




このわがままな言い分は。

『煌が買って戻ってきてくれたら……。』



「やだ。」



やだって。







「早く買いたいもの買って帰らないと無駄にここにいれば見つかる確率高いよ。」

行ってこい、と指差すキング。

……この場合。

キングの言いなりになるのはかなり悔しいけど、誰かに見られて後々誤解されて言われる方が嫌かも。




待たせた罪悪感もあります。



『動かないでね!』



「あー、はいはい。」



渋々踵を返して行こうとすれば。





「菜月。」


反射的に振り返る。




と、

「ほら。」




ふっ、と下から放物線を描くようにしてゆっくりとこっちに飛んできた物体。

必死に両手で掴みました。

痛い。




爪で自分の手引っ掻きました。





手の中には、ワンコイン。








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