王様の、言うとおり
キングは目も良いから……。
少し、腹立たしくなりました。
……はしまき買ってきたのに。
並んだのに。
温かいうちに食べた方が良いからって走ってきたのに。
……森田くんから逃げてきたと言うのもあるけど。
いつまで居続けるつもりなのか分からないけれど、キングが一人なのを逃すはずがない彼女達はその場から全く動く気配も無く。
キングはと言えば私のことなんか忘れたかのよう。
こちらに視線も全く向けません。
………、
何だか苛立って、その気持ちのまま私は足早にその場を去りました。
走りたかったけれど、人混みにまぎれた中じゃ走ることも出来なくて。
はしまきのパックを落としてしまわないようにギュッと握ります。
温かい。
袋、貰えば良かったなぁ……。
周りの騒ぐ熱やはしまきの温かさとは逆に自分が冷めていくのを感じました。
【なな。王様と夏祭り】
来たくなかったと思う自分と
楽しみたいと思う自分が
心の中で戦うのです。