王様の、言うとおり
「菜月。」
もう一回呼ばれる私の名前。
だけど私は、顔を前に戻して俯いてしまう。
これは、私の意地だ。
少し心細くて、キングが来てくれて、声を聞いてちょっと安心して泣きそうになったって知られたくない。
高校生にもなって、自分で歩いて来たのに居場所が分からなくて。
おまけに悔しくて自分でも分からないけれど泣いてしまったなんて……。
絶対にバカにされるに決まってる。
俯きながらも、背後のキングの動きはしっかり把握しておこうと意識を向けます。
静かに呼吸する音が聞こえた後、スニーカーと地面の擦れる音。
トン、トンと段差を降りる音は、私が座っている横を通り過ぎて更に下へ。
「……何で泣いてんの。」
ハッ、と顔を上げれば、すぐ目の前にしゃがみ込んでいるキングが、私を覗き込むようにしていました。
『泣いてないもん。』
「跡、くっきりあるけど。」
『暗くて見えるはずがない。』
「跡あるんじゃん。」
『っ!』
慌てて拭おうと腕で頬を擦っても、水分らしきもの、跡の感触はありません。
……そんな私の動作を見て、笑ったキング。