王様の、言うとおり
『やだ。』
「上げないと迷子になった事、おじさん達に言うぞ。」
『やだ……!』
お父さん達に笑われるのは嫌。
迷子じゃないのに。
脅しによって強制的に上げさせられた顔。
目の前のキングは笑っていて。
薄暗いのに、はっきりと見えました。
「あれは、わざと。」
『わざと……?』
「あいつらが話してる時に俺が違う方向をじっと見てたら“何見てるの”って俺の視線を追い掛けるだろ?
その先に菜月が突っ立ってたら……怪しまれる。」
『バレないように無視したって事?』
「そ。」
今日は理解早いじゃん、なんて言うキング。
そっか。
バレたくないからした事だったんだ。
キングの頭がいまいち分からないけれど、きちんと考えての行動だった事は分かりました。
「だから、機嫌直して。」
『………。』
「……前にもあったな。こういうの。」
『え?』
ボソッと顔を逸らしながら呟いたキング。
聞き返せば、すっと立ち上がって。
思わずそれを見上げます。
「好きなの。買ってあげるから機嫌直せ。ほら、いくぞ。」