こんぺいとう【2】
「今日は、なんの日だ」
「え?」
「っ、今日だよ、今日!」
「……えーっと、」
なんでちょっと怒ってるのかがさっぱり分からないけど、とにかく君、顔が真っ赤だよ?
「今日は、」
今日は、わたしの誕生日だ。
今までに一度も祝ってもらった覚えはないし、今年も祝ってもらおうなんて思ってなかった。
だから別にあえて触れなかった。
「誕生日、おめでとう」
「っ」
立ち止まった慎ちゃんのすぐ後ろには、わたしが好きなケーキ屋さんがあって。
「どーでもいいことはペラペラ喋るくせに、なんで言わねーんだよ、お前は」
頭をガシガシと掻きながら、不機嫌そうに眉を寄せる彼から目が離せない。
視界が揺れる、世界が滲む。
「前に言ったろ?俺は本当に大切に想った奴のことしか祝わねーって……なのに、莉乃の誕生日忘れるわけないだろ」
ずっとずっと好きで、好きで好きで大好きで、やっと手にいれたのにどこかでわたしは諦めていた。
慎ちゃんはわたしに押し負けて、仕方なく付き合ってくれてるんじゃないかって、心の隅っこで思ってた。
だから不安で、だから悲しかった。
彼が誰よりも恥ずかしがり屋で、誰よりも嘘が嫌いだってこと、知ってたはずなのに信じきれてなかった。
「あんま言わねーからよく聞けよ」
ふわっと、焼きたてのケーキの匂いが風に連れられてわたし達を囲んだ。
「好きだよ、莉乃」
バカみたいに泣きじゃくるわたしを腕の中に収めて、慎ちゃんは「泣くなよ」って小さく笑った。
「ありがとう、慎ちゃん」
わたしも、大好きだよ。
【ロールキャベツとケーキ】
(これからは遠慮しないから)
(……えっと、なにを?)
(いろいろ。覚悟しとけよ)
(…………え、)