こんぺいとう【2】





「……いない」


あの日から今日でちょうど1週間が経っていた。

彼は私のイヤリングを持ち去ったまま、すっかり姿を見せなくなっていた。


始発の電車、私達が座る定位置の4人掛けにひとり沈む。


静かだ、とても。

つまらない、寂しい、悲しい。

少し前までの生活に戻っただけなのに、なんでこんな気持ちになってるんだ。

本当にバカだ、私は。


「あれも気に入ってたんだけどなぁ」


彼が連れてった黄色いいちごのイヤリング。

残った方耳だけが重い。

買ったばっかりだったのに、あーぁ。





鞄の中、ずっとずっと持ち歩いてる桜。

1ヶ月、2ヶ月、過ぎていく時間、取り戻す感覚。

まるで夢でも見ていたんじゃないかと思うくらい、何事もなく日々が巡る。

でもどうしても、家に置いていけない桜。

いつかまたあの笑顔が見たいって、未練がましくしがみつく。


彼の“明日”を信じたい。

彼との未来を描きたい。





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