こんぺいとう【2】
「わーかったから、喧嘩しないの」
ね、と念押しして俺に微笑う成の小さい手に力が入っていた。
「とまくんも、頼ちゃんが好きなのは分かるけどさ、あんまり苛めてあげないで」
「はーい、」
まるでペットの犬に叱るようなやんわりとした、それでいてどこかに本気の色が滲むような、そんな言い方。
斗真が俺を好きなんて1ミリも肯定したくはないけど、口を挟む気にもなれず黙って金髪から手を離した。
「ほんっと、頼は過保護なんだよなぁ」
「次やったら本気でその痛みまくった髪むしり取ってやるからな」
「とまくんがボーズって斬新だね」
「俺、頭の形いいからたぶん似合っちゃうよ?」
「言ってろ、」
差し掛かった踏み切りで斗真と別れるのが決まりのパターンで。そこからさらに10分くらい歩くと成の家がある。
赤い屋根が目印の、洋風で凝った外観は、毎日のようにおばさんが手入れをしているらしく、一点の汚れもなく綺麗に保たれている。
「明日、俺早いから迎えに来れないけど、ちゃんと遅刻せずに行けよ?」
「えー、じゃぁ、成も早くいくから迎えに来て」
「早く行ってどーすんだよ」
「教室で大人しく寝とく」
「バカか、」
「やだ、頼ちゃんと行くの!」
自分の要求を通そうとするときは、成は決まって普段より甘えた声を出す。
俺がこれに弱いことを、この何年かで学習しているのだろう。そう思いながら分かった分かった、と折れてしまう自分に苦笑した。