こんぺいとう【2】
私が言うのもおかしいけど、奏くんはかなりのシスコンだ。
学校では格好つけてクールぶっているようだけど、家ではうんざりするくらい私にべったりで......最近でもお風呂に押し入ろうとするような、言ってしまえば変態だ。
「俺、花音のこと本気で好きだもん」
「......ぜってー、殺すっ」
「ダメだって、奏くんー!」
って、今日はこんなことをしにわざわざ上級生の階に来たわけじゃない!
周りからの好奇の視線も気になってきたところだった。
これ以上ここにいるのは耐えられない。
「っ奏くん、私、宇野先輩に用事があるから!」
「「............はっ?」」
固まった2人を一蹴して宇野先輩の腕強引に引っ張ってその場を離れる。
別に奏くんの前で渡してもよかったんだけど、あの場では無理だった。
人が多すぎる。
「......えぇーっと、花音?」
「これ、」
「っへ?」
放課後はどこも人が多くて、結局屋上まで逃げてきてしまった。
さすがの宇野先輩も困惑気味。
これはさすがにベタ過ぎるシチュエーションなんじゃないか......いや、特に意味はないんだけど。
「え、っえ!」
ほら見ろ、この顔。
空気が読めない宇野先輩は、私が差し出した小さい箱に確実に良からぬ期待の目を向けている。
「たっ、ただの、お返しですから!」
「えーっ、」
「なにが“えーっ”ですか、」
そう、ただのお返し。
バレンタインになぜか私は先輩からチョコを貰ってしまっていた。
それも有名な高級チョコの詰め合わせみたいなやつを。