こんぺいとう【2】





「手作り?」

「......なにか問題でも?」

「ないない!嬉しいっ!」

「っ」


あー、もう、やめてくれないかなぁその笑顔。


心臓がうるさい。

呼吸ができなくなる。


「おおげさなんですよ、先輩は」

「花音だからじゃん」


ずるいよ、ほんとに。

そんなにさらっと言わないでよ。


私はこんなに苦しいのに、なんにも分かってないんだよ先輩は。

なんで私が“先輩”って呼ぶようになったのか、なんでいきなり敬語になったのか、なんで前みたいに喋らなくなったのか。

先輩は寂しいって思ってるかもしれないけど、私はその何十倍も悲しいし寂しいんだよ。





「じゃぁ、私、帰ります」


妹みたいに思ってるんなら、もう二度とこんなことしないでほしいのに。

先輩のその笑顔を見れなくなるのが嫌で、完全に離れられないでいるなんて私も相当なバカだけど。


「花音、」

「っ、さわんないで!」

「!」


バレンタインの日、私がどんな気持ちで先輩からのチョコを受け取ったか知ってるの?


「もう、私に構わないでください」


これ以上、好きになるのは嫌だから。






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