こんぺいとう【2】
アリはどんどん大人になっていく。
綺麗に、可愛く、魅力的に。
時間軸に置いていかれてしまった俺は、あの日と変わらない姿のままで。
時は待ってくれない。
時は戻ってくれない。
だからこそアリには早く前に進んでほしいのに。
時間と共に霞んでいく俺との思い出を抱き込んでいる小さな身体。
痛々しくて見てられない。
「シオ、どこにいるの?」
独りだと寂しいだろうからと、未だに海底で寝転んでる俺を探そうとする愛しい人。
どこまでも、アリは優しい。
『アリ、もういいんだ。俺達のことは俺だけが忘れずに持っておくから、アリは手放してくれていいんだ。過去の想いにしなきゃいけないんだよ』
アリを求める輩は多い。
きっと、彼女を置いて死ぬような俺なんかよりずっといい男がいるはずだ。
だからお願い、
もうここにこないで。
「アリア、」
不意に後ろから聞こえた声に、アリと同時にゆっくり振り向いた。
『ルイ』
「ルイ」
そこにいいたのは、懐かしい俺の親友で。
「帰ろう、雨が降るって」
「あめ、」
「どしゃ降りになるって言ってたから、迎えに来た」
そうか……。
俺がいなくなって、今までずっとルイがアリを支えてくれていたのか。
そうか、ルイはアリが好きだったのか。
「シオ、冷たいよね」
「大丈夫。海の中には雨は降らないよ」
「……そっか、」
「アリアを雨に濡らしたら、俺がシオンに怒られちゃう」
だから、今日は帰ろう?
俺の目の前で、俺が触れてやれないアリの頭を優しく撫でる手。
そうだよ、