こんぺいとう【2】
通学のピークよりかなり早いこの時間に、自転車を飛ばして細道を駆け抜けるその人。
着てる制服から同じ学校の人だって言うことは分かるんだけど、校内で見つけたことはなくて。
いつもこの数分だけ彼を見るのが習慣になっていた。
「っあ、」
少しだけ前にいたその人を、今日も橋の手前で電車が追い抜く。
その時に。
「やっば、」
こちらを流し見た彼と、目があってしまった、気がした。
それは一瞬の出来事で。
本当に目があったのかも分からないけど。
たったそれだけのことで、私の心臓はバカみたいに鼓動を速めていた。
「ふぅ、」
それから10分。
開いたドアから雪崩のように降りていく人の波を見ながら深呼吸。
最後の最後に電車を降りて、波が引いたホームを歩いた。
鞄の中から伸びたイヤホンを耳につけて、聞きたい曲を選びながら改札を抜ける。
駅からまた10分。
お店もなにもない、街灯も疎(まば)らな道をひたすら歩いて学校に向かうことになる。