執事の詐欺



じたばた暴れていることしかできないあたし。


しかも、それでいて瀬名さんから離れることも出来ない。



「瀬名さん!!ちょっといい加減に……」



ちゅっ










………え…??


え!? え!?



「初めてのちゅー頂きました。お嬢様。」


ニンマリと舌を出して笑う瀬名さん。



ええええ!!!


あたしはバッと瀬名さんから離れる。



「瀬名さん!!何を…!!」


びっくりして何から話せば良いのか分からない。



「だってさぁ??良くね??将来は婚約者が出てくる訳だし。今から慣れようぜ。」


この人…初日でこんなんじゃ…

相手に出来なくなる。


……しかもこの態度からして、もう執事じゃないでしょ。


執事じゃなかったら……詐欺師…



「あなた、詐欺師でしょ??」

「は??」



「執事と見せかけての詐欺師なんでしょ!? 」


絶対こんな人執事だと思いたくない!!




「詐欺ねぇ…。」


珈琲を飲みながら呟く瀬名さん。


それが意外にも絵になっていて、何となく悔しい。




「俺は執事なんだけど。」


と瀬名さんは言うけれど、


あたしは……



「あたしは詐欺師だって分かりましたから!!
執事なんて認めないから!!」



こんな人!!


詐欺師の何でもない!!





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