もしもキミが。

 「あの……。」

 何も考えずに声をかけて、あとが繋がんなかった。

 でもその子はゆっくり顔をあげて、

 「あっ、篠原さんっ!!」

 って言ってくれたんだよね。

 もう分かると思うけど、この子が千尋だった。

 この時が、私と千尋が出会った瞬間。

 でも私はまだこの時、千尋の名前を知らなかった。

 「えっと…。あ、あの……?」

 「あ、私?私は斉藤千尋!よろしくね、篠原さん。」

 斉藤…千尋。そんな子が居たような気もする。

 うん……あんまり覚えて無いけど。

 「あ、よろしくね。えっと…咲でいいよ。」

 でも千尋は、首を振ったんだよね。

 そして、こうも言った。

 「あんまり……仲良くならない方がいい。後で悲しいだけだから。」

 私はその時、意味が全然分からなかった。

 むしろ、怒りさえ覚えた。

 せっかく仲良くなろうって言ったのに…。

 ってね。でも、今思えば当然かもしれない。
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