もしもキミが。

 「…き、さぁきっ!」

 もぉ~、誰?安眠妨害すんなっ!

 「咲っ!起きろ、起きろコラッ!」

 へ?千尋?

 ムギュッ。痛い、痛い痛い!

 「いーたーいーっ!」

 あまりの痛さに目を覚ますと、

 誰もいなくなった体育館と、

 私のホッペタを抓る千尋が

 目に飛び込んできた。

 「寝てた?」

 当たり前の質問をすると、

 「起きたって事はね。」

 当たり前の答えが返ってきた。

 …ですよねぇ~。寝てましたよね~。

 「さっ、教室行かないと!

  みんな待ってるよ!!」

 嘘?まぢ?ヤバいぢゃん。

 まだどこか寝ぼけてる私は、

 ヤバいと思いつつ、

 「よっこらしょ。」
 
 と言って立ち上がった。

 「それと…。」

 何か言いたそうな千尋は、

 顔がニヤけている。 

 首を傾げる私に、

 クスッと笑って千尋は言った。

 「よだれ、たれてるよっ。アハハッ!」

 んなっ!失礼極まりない!

 そりゃ私だって

 よだれの一つや二つたらすわ!

 笑うなど、ゆ、許せん…!

 ケラケラと千尋は笑って、先に走って行く。

 「ちょっと待ってー!!」

 私はそんな千尋を、

 制服の袖で口を拭いながら

 追いかけていくのだった。

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