箱の内の少女
「ことはちゃん、お母さんお仕事あるから帰ったって...」
看護師に告げられても、無表情。
私は、当時も白い天井を見ていた。
からっぽだった。
口から全てが出てしまった感じだ。
....いや、目から、か。
「.....そう。」
何もしてほしくなかった。
何もしたくなかった。
何もない状態が苦しかった。
何かが辛かった。
私が失ったもの。
抉りとられた戻らない右目。
上達が見込めない言葉。
――――――そして
ショックで流れ落ちてしまった『笑顔』だ。
ハッキリと分かるのはこの三つくらいだ。
他は所々、多少変化はあったが、すぐ治ったり、治る見込みがあるか、たいして気にならないかだった。