箱の内の少女

気まぐれだった。

いつもならあのまま目を瞑り、寝た振りだろう。

でも今日は、何となくそれをしなかった。

何となく、だ。



ぺたぺたぺたぺた....

広い館内に足音だけが響いた。

ぺたぺたぺたぺた.....

ことは自体どこに行こうとも考えていなかった。

だけど足はゆっくりだけど、確実にどこかに向かっていたのを感じた。

ぺたぺたぺたぺ.......

足音は止まった。

また館内に静寂が戻る。

いや、そもそもことはの足音なんて大した音でもないのだ。

そんな細く白い足が導いた先は、中庭だった。



広さは、普通の病院ではあり得ないほどだといつか、誰かが、
言っていたような気が、する.....

ことはは、すぐそこにあったベンチにもたれた。


苦しい.....

惨めなものだ。

普通なら中学校に難なく登校しているはずの歳の少女が、
2階から降りてきたぐらいでへばっているのだから。

苦しい...
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