箱の内の少女
しかも、『俺、なんか悪いことしたかな?』と呟きながら。
どうしようもないアホである。
...でも、
このアホは5年前からたまーに出向いてくれる『ただのアホ』ではないアホなのだ。
「いやぁー、もう少しで試合でさーっ。気合い入っちゃってっ」
病室で気合いを入れられても困るだろう。
「毎回、そんなこといってるじゃ、ないか。」
あ、そうだ、と思い出したこいつはやっぱりアホである。
「そーいえば。これ!ことはのおかーさんからだぞ!」
あぁ、ありがとう、と言いながらその白い封筒をもらう。
私の、母。大手旅行会社の女社長。
忙しくて、なかなか見舞いは来れないらしい。
こうして手紙を書いて、このアホに渡すのが精一杯、だそうだ。
....ちなみに。
私の父親は私が小さい時に病気で死んだそうだ。
父がいないからと言ってヒステリックに叫ぶわけでもなく、
夜な夜な泣いてるというという事でもないのだ。
私にとっては居ないのが普通であり私の世界、常識なのだ。