白銀の女神 紅の王Ⅱ
本当に目が離せない奴だ
まだ使用人も寝静まる早朝―――
僅かに身じろいだ腕の中の存在に、フッと意識が覚醒する。
少しの衝動でも目を覚ましてしまうのは、昔からの習慣からか…
一旦覚醒に向かった意識は抑える事は出来ない。
目を開いた先に見えたのは、ぼやけた景色。
振り払うようにして目を何度か瞬かせれば、やっと明らかになる。
視界いっぱいに入る“銀”
白に近い銀髪は絹糸のように煌めき。
その小さな体を後ろから抱きすくめるようにして囲っていると、その肌触りがくせになりそうなほどサラサラとしていて…
柔らかい身体を抱きしめていれば、不思議と心地良い。
これは紛れもない“安堵”
それをもたらしてくれるのは、この腕の中の女だけだった。
エレナ……
起こしてしまわぬよう、心の中で名を呼ぶ。
すーすーと寝息を立て、自分だけ気持ちがよさそうに眠っているのを見ると腹が立つ。
コイツはいつもこうだ。
俺の気など知りもせずに、ただ眠る。
そもそも、傍にいろとは言ったが、エレナは大分意味を履き違えている。