白銀の女神 紅の王Ⅱ
「婚儀は1ヵ月後だ。それまでにエレナに教えておけ。」
何を…など、先ほどの会話を聞いていたニーナには分かっているはず。
その証拠に赤い顔がもっと赤くなっている。
「わ、私がですか?」
「あぁ」
他に適する者もいない。
デュークはおろかウィルは論外だ。
エレナに何を吹き込むか分かったものではないからな…
「分かったな?」
「はい……」
念を押すように聞けば、しぶしぶ返事をするニーナ。
「てっとり早く実践すればいいのに、シルバは優しいんですね。」
「皮肉なら聞かないぞ。」
ウィルの皮肉を受け流し、ぐったりと寄りかかっているエレナを抱き上げる。
しかし、ウィルの腹の虫はおさまらないようで…
「皮肉の一つも言わせてください。貴方はエレナさんと仲直りできて良かったでしょうけど、“誰かさんのおかげで”僕はこれからエスト王国との関係修復に労力を削がなければならないんですからね。」
誰かさん…の部分を強調しながらクドクドと小言を言うウィル。
「それがお前の仕事だ」
そう言ってエレナを抱えて中庭を出ていく。
今日は久しぶりに眠れそうだ。
そんなことを思いながら――――
END