白銀の女神 紅の王Ⅱ
離れることは許さない
シンと静まった夜の後宮―――
「え?」
「え?」
見上げれば少し驚いたような訝しげな表情のニーナがシーツを替えていた手を止めてこちらを見る。
端から見れば、お互い見つめ合い、疑問符を浮かべていると言う何とも奇妙な光景だっただろう。
「今呼んだでしょう?」
読んでいた本を机に置き、ニーナに問いかける
しかし――――
「いいえ……空耳では?」
驚いた表情のまま否定され、それが嘘でないと分かる。
確かに呼ばれた気がしたのに。
「最近多いの…」
呼ばれたと思っていても私の気のせいだったり。
ヒソヒソ声がしたと思って周りを見渡すけど誰もいなかったり。
それが一度きりだったら気にならないのだが、こうも続くと悩みの種にもなる。
ニーナは私の表情が曇っていることを気にしつつも、明るい声で応える。
「婚儀が迫っているので緊張なさっているんですよ」
「そうなのかな…」
少々の不安が胸に残り、重い溜息を吐くと、ニーナがおずおずと口を開いた。
「マリッジブルーですか?」
「ッ……」
不覚にもその言葉に頬を赤らめる。